第一種電気工事士の筆記試験には高圧受電設備の単線結線図の問題がありますが、初めて見る方は、初めて見る記号がいっぱいあって、配置もバラバラでどうやって覚えたら良いかわからない方は多くいるのではないでしょうか。私自身も最初は全く分からずに捨て問題と思い全く勉強せず試験に挑みましたが、不合格となりました。
単線結線図の問題は10~20点程度出題される為、この問題で点数を取らないと合格への道のりが険しくなります。
この記事ではどのようにして単線結線図を覚えたら良いのか、全体の構成、各設備等の用途について下記の記事内容で解説します。
1 高圧受電設備 単線結線図とは?
2 単線結線図の構成:電力会社との責任分界点、電気料金の計量、電圧値・電流値等のチェック、高圧→低圧への変換
3 各設備の名称、記号、用途、接地について:GR付PAS、VCT、Ch、DS、CB、LA、PF、計器類、LBS、PC、SC、SR、T
それではどうぞ!!
高圧受電設備 単線結線図とは

「出典:2020年度 第一種電気工事士筆記試験 :一般財団法人電気技術者試験センター 試験の問題と解答 | ECEE 一般財団法人電気技術者試験センター (shiken.or.jp)」
高圧単線結線図とは、高圧以上で受電する設備の配置と配線を表した図のことで、電力会社から送られてきた高圧の電気が建物でどのような設備、計測器、保護装置で構成されているかをぱっと見でわかるようにした図のことです。
≪電力会社から送られてきた電気は、太い線のGR付PAS→VCT→DS→CB→LBS→Tの順番で建物の設備に流れ、私たちが使用するコンセントや照明まで電気が流れてくる≫
≪LAは雷が建物へ落ちた時に建物を守る、SR.SCは調相装置といって電気を効率よく使えるもの≫
※電気の向きは上から下に向かって流れています
≪細い線の保護装置(DGR,OCR)や計器類(V,A,W,cosΦ)等は電気の流れを監視したり、異常があった際に電気事故を防ぐもの≫
どうしても単線結線図に慣れない方は下の右図に簡易的なブロック図に変換してみましたので、まずはどのような設備で単線結線図が構成されているのか覚えましょう。これを覚えたら左図の単線結線図を覚えていただければと思います。
問題に出題される単線結線図には機器全部に名称を書いてくれていません。また、機器の接地の種類について問われる問題があるので、名称、接地を下記の左図に記入しています。

細かいのはさておき、単線結線図の構成としては右図を覚えてしまえばどの問題もほとんど機器の配置は変わりありません。
単線結線図の構成

単線結線図を4つに分けて構成することで、どのような役割があるのかを理解することができれば、やみくもに暗記するよりも理解度を増すことができます。構成は下記の通りです。
- 電力会社との責任分界点
- 電気料金の計量
- 電流・電圧値等の状態チェック
- 高圧6600V → 低圧 210V / 105Vへ変換
電力会社との責任分界点
1つの施設の高圧設備で地絡(漏電)事故が発生した場合に、電力会社の保護装置により検出し停電してしまうと同じ電線から電力を供給されている他の需要家(他の施設)も停電してしまいます。これを波及事故といいます。これを防止するため、電力会社との責任分界点に区分開閉装置(GR付PAS)を設置します。
GR付PASとは、施設の高圧設備で地絡(漏電)事故が発生時、地絡電流を検出し速やかに開閉器を開放し他の施設へ事故が波及すること防止します。
電気料金の計量
電力会社への電気料金支払いの為、施設内で電気をどれだけ使用したのかを電力メーター(Wh)にて計量しています。
需給用計器用変成器(VCT)とは、高圧の電圧を変成する計器用変成器(VT)と電流を変成する計器用変流器(CT)を組合せた機器で、変換した電圧・電流を電力メーター(Wh)へ送る装置です。
電流・電圧値等の状態チェック
正常に高圧機器等が動作しているのかを確認。例えば、建物の電気室にて、毎日の電流・電圧値等の点検し異常がないかを確認します。異常があった際には、監視盤へ警報を発報する。
高圧6600V → 低圧 210V / 105Vへ変換
変圧器(T)にて、高圧6600Vを低圧210V / 105Vヘ変換することでコンセントや照明等が使用することができます。
単線結線図 各設備の用途

単線結線図の構成についてはちょっと理解していただけたと思いますので、各設備の用途について解説しています。
GR付PAS(地絡継電装置付高圧交流負荷開閉器)LBS、ZCT、ZPD、DGR: A種接地工事(EA)

GR付PAS(地絡継電装置付高圧交流負荷開閉器)とは、高圧設備で地絡(漏電)事故発生時、地絡電流を検出し速やかに開閉器を開放し他の施設へ事故が波及すること防止する装置です。短絡電流のような大きな電流は遮断できません。
GR付PASの構成は、LBS、ZCT、ZPD、DGRからなっています
- ZCT(零相変流器):零相電流(地絡電流)を検出
- ZPD(零相基準入力装置):DGR(地絡方向継電器)を動作させる零相電圧を検出
- DGR(地絡方向継電器):整定値以上の零相電流、零相電圧を生じた際に動作
- LBS(高圧交流負荷開閉器):負荷電流の開閉を行う
地絡をZCT、ZPDで検査 → DGRで地絡かを判断 → 地絡の場合:LBSで回路を遮断
VCT(需給用計器用変成器):A種接地工事(EA)

施設内の電力使用量を電力メーター(Wh)にて計量しています。
需給用計器用変成器(VCT)とは、高圧の電圧を変成する計器用変成器(VT)と電流を変成する計器用変流器(CT)を組合せた機器で、変換した電圧・電流を電力メーター(Wh)へ送る装置です。
Ch(ケーブルヘッド):A種接地工事(EA)

高圧ケーブルを高圧機器に接続するために末端処理を施した部分。
DS(断路器)

無負荷の状態で電路を開閉するもので、遮断器や開閉器とは違い負荷電流や短絡電流の開閉はできません。遮断器を開放した後でなければ断路器を開放できず、また、断路器を閉じた後でなければ遮断器を投入できません。
CB(遮断器):A種接地工事(EA)

高圧電路の開閉や短絡電流の遮断に用いられる。過電流継電器(OCR)と組合わせることで整定値以上の電流が流れた場合に遮断器に回路を遮断する。
LA(避雷器):A種接地工事

雷等の異常電圧が電路に侵入した際、大地に放電させて高圧機器等の絶縁破壊を防ぐ目的で使用。
PF(電力ヒューズ)

電路や機器の短絡保護を目的として使用され、短絡電流が流れた際はヒューズを溶断することで機器を保護する。短絡電流・過負荷電流の遮断することはできるが、電路の開閉はできません。
計器類(V,VS,A,AS,W,COSΦ)、保護装置(OCR)、VT、CT: D種接地工事(ED)

高圧や大電流を計測器や保護装置に適した電圧・電流値に変換し、各設備に異常が無いかを点検する為の装置です。
①電圧を測定する為の装置
- VT(計器用変圧器):回路に並列に接続し高圧を低圧(110V)に変圧
- VS(電圧計切替開閉器):1つの電圧計で三相(R-S,S-T,T-R間)の電圧を測定できるようにする
- V(電圧計):VTの二次側にて電圧を測定する(図に測定部分を記入)
②電流を測定する為の装置
- CT(計器用変流器):回路に直列に接続し大電流を小電流(5A)に変成
- AS(電流計切替開閉器):1つの電流計で三相(R,S,T)の電流を測定できるようにする
- A(電流計):CTの二次側にて電流を測定する(図に測定部分を記入)
③消費電力・力率を測定する装置
- W(電力計):VT、CTの二次側にて消費電力を測定
- COS(力率計):VT、CTの二次側にて力率を測定
④保護装置
- OCR(過電流継電器):CBと組み合わせて使用、整定値以上の電流が流れると動作しCBに信号を飛ばす。短絡・過負荷保護に用いる
LBS(高圧交流負荷開閉器)

高圧交流負荷開閉器と限流ヒューズを組み合わせた装置で変圧器やコンデンサの開閉に使用される。限流ヒューズで過負荷電流や短絡電流の遮断を行い、負荷開閉部にて負荷電流の開閉を行う。
PC(高圧カットアウト)

50Kvar以下のコンデンサや300KVA以下の変圧器の開閉や過負荷保護を目的とし使用される。
SC(高圧コンデンサ)、SR(直列リアクトル):A種接地工事(EA)

SC(高圧コンデンサ):力率改善用に用いられる
SR(直列リアクトル):SCの高調波電流による障害の防止やコンデンサ回路投入時の突入電流を抑制
※調相設備とは、SCやSRのように無効電力を調整して力率改善を行う装置
T(変圧器):A種接地工事(EA)、中性線はB種接地工事(EB)

高圧6600Vを負荷の使用電圧(210V / 105V)に変圧する。
- 単相3線式(1Φ3W)の変圧器(左図円と円の間に線でているもの):電灯盤や制御盤
- 三相3線式(3Φ3W)の変圧器(右図Δ3Δ):動力盤
単相か三相かの見分け方は変圧器記号の上と下にある線の数。線が2本だと単相、線が3本だと三相