第1種電気工事士 2019年度 筆記試験の問1~10について、解説していきます
計算問題は毎年似たような問題が出てくるため、点数を取りやすいです。今回の問題も過去問と変わらない問題ばかりです。
それではどうぞ!!
2019年度 問1

導体2本を平行に距離d【m】離し、電流を流すと、導体に働く電磁力Fは、
電磁力F= $\frac{μI^2}{2πd}$(I:電流、μ:透磁率、d:距離)
導体間に働く電磁力の向きは、フレミングの左手の法則により下記の通り
≪吸引力:2本の電線に流れる電流の向きが同じ向き≫
≪反発力:2本の電線に流れる電流の向き逆向き≫
問の2本の電線に流れる電流の向きは、左側が上向きに、右側が下向きと逆向きに流れています。したがって、電磁力の向きは反発力となります。
電磁力F= $\frac{μI^2}{2πd}$なので、$\frac{I^2}{d}$に比例します。
したがって、答えはハです
2019年度 問2

1 合成抵抗を求める
2 電流値を求める
3 各抵抗にかかる電圧(V1, V2)を求める
4 電流I3を求める

上記図をもとに解説していきます。
1 合成抵抗を求める
- 6Ωと6Ωの合成抵抗R1は、R1=$\frac{6Ω×6Ω}{6Ω+6Ω}$= $\frac{36Ω}{12Ω}$ = 3Ω
- 6Ωと3Ωの合成抵抗R2は、R2=$\frac{6Ω×3Ω}{6Ω+3Ω}$= $\frac{18Ω}{9Ω}$ = 2Ω
回路全体の抵抗Rは、R=3Ω+2Ω=5Ω
2 電流値を求める
電源電圧は90V、抵抗は5Ωなので、電流値I=$\frac{V}{R}$=$\frac{90V}{5Ω}$ =18A
3 各抵抗にかかる電圧(V1, V2)を求める
- 抵抗R1にかかる電圧V1は、V1=I×R1=18A × 3Ω = 54V
- 抵抗R2にかかる電圧V2は、V2=I×R2=18A × 2Ω = 36V
4 電流I3を求める
電流I3は、I3=$\frac{V2}{3Ω}$=$\frac{36V}{3Ω}$=12A
したがって、答えはハです
2019年度 問3

誘導性リアクタンスXLと容量性リアクタンスXcの公式
◆誘導性リアクタンスXL:XL=2π f L (f:周波数、L:リアクトル)
◆容量性リアクタンスXc:Xc=$\frac{1}{2π f C}$ (f:周波数、C:コンデンサ)
1 周波数50Hz → 60Hzに変更した場合のXL’、Xc’を求める
2 リアクタンスXを求める
1 周波数50Hz → 60Hzに変更した場合のXL’、Xc’を求める
◆誘導性リアクタンスXL:XL=2π f L (f:周波数、L:リアクトル)
XL=2π f Lの周波数を50Hz→60Hzにした場合は、f=60Hz / 50Hz =1.2倍となるので、XL’=1.2XL
したがって、XL’=1.2XL=1.2×0.6Ω=0.72Ω
◆容量性リアクタンスXc:Xc=1/ 2π f C (f:周波数、C:コンデンサ)
Xc=$\frac{1}{2π f C}$の周波数を50Hz→60Hzにした場合は、f=60Hz / 50Hz =1.2倍となるので、Xc’=$\frac{1}{1.2}$Xc
したがって、Xc’=$\frac{1}{1.2}$Xc=$\frac{1}{1.2}$×12Ω=10Ω
2 リアクタンスXを求める
リアクタンスX=XL – Xc=0.72Ω – 10Ω = -9.28Ω (マイナスが付いているのは容量性という意味)
したがって、答えはイです。
2019年度 問4

1 直流回路の時の抵抗値を求める
2 交流回路の時のインピーダンスZを求めて、リアクタンス値Xを求める

上記にて図1直流回路と図2交流回路で分けました
1 直流回路の時の抵抗値を求める
直流回路の時は、周波数0なのでリアクタンスXは0となります。
抵抗Rは、R= $\frac{V}{I}$ =$\frac{80V}{20A}$ =4Ω
2 交流回路の時のインピーダンスZを求めて、リアクタンス値Xを求める
①インピーダンスZはZ=$\frac{V}{I}$= $\frac{100V}{20A}$ =5Ω
②リアクタンスXは、X=$\sqrt{Z^2-R^2}$=$\sqrt{5^2-4^2}$=$\sqrt{9}$ = 3Ω
したがって、答えはロです
2019年度 問5

1 1相あたりのインピーダンスZは、Z=$\sqrt{R^2+X^2}$
2 Y回路の線電流Iは、I=$\frac{相電圧}{インピーダンスZ}$ ※相電圧 =$\frac{線間電圧V}{\sqrt{3}}$
3 回路の消費電力Pは、P=3×I2×R 【W】(又はP=√3×VIcosθ)
4 回路の無効電力Qは、Q=3×I2×X 【var】 (又はQ=√3×VIsinθ)
1 1相あたりのインピーダンスZは、Z= $\sqrt{R^2+X^2}$
1相あたりのインピーダンスZは、Z= $\sqrt{R^2+X^2}$=$\sqrt{8^2+6^2}$ =$\sqrt{100}$=10Ω
問イの10Ωは正しい
2 Y回路の線電流Iは、I=$\frac{相電圧}{インピーダンスZ}$
Y回路の線電流I(相電流)は、I=$\frac{相電圧}{インピーダンスZ}$=$\frac{V}{\sqrt{3}Z}$ =$\frac{200}{\sqrt{3}×10}$=$\frac{20}{\sqrt{3}}$A
※Y回路は線間電圧V=√3×相電圧より、相電圧 =$\frac{線間電圧V}{\sqrt{3}}$ 、 線電流I=相電流I の関係性がある
問ロの10Aは誤り
3 回路の消費電力Pは、P=3×I2×R 【W】
消費電力Pは、P=3×I2×R=3×$(\frac{20}{\sqrt{3}})^2$×8=202×8=3200W
問ハの3200Wは正しい
※P=√3×VIcosθでも解くことができます。cosθ=R/Z=8/10=0.8より、
P=√3×VIcosθ=√3×200×$\frac{20}{\sqrt{3}}$×0.8=3200W
4 回路の無効電力Qは、Q=3×I2×X 【W】
無効電力Qは、Q=3×I2×X=3×$(\frac{20}{\sqrt{3}})^2$×6=202×6=2400W
問二の2400Wは正しい
※Q=√3×VIsinθでも解くことができます。sinθ=X/Z=6/10=0.6より、
Q=√3×VIsinθ=√3×200×$\frac{20}{\sqrt{3}}$×0.6=2400W
したがって、答えはロです。
2019年度 問6

1 電流値を求める
2 抵抗Aに掛かる電圧VAを求める
3 抵抗Bに掛かる電圧VBを求める
4 全電力損失PLを求める

上記図を基に解説します
1 電流値を求める
各負荷に流れる電流は、下記の通りです。
- 負荷Aに流れる電流IAは20A
- 負荷Bに流れる電流IBは10A
電流Iは、I= IA + IB = 20A + 10A =30A
2 抵抗Aに掛かる電圧VAを求める
VAを求めるには、電源電圧 210V – 電圧降下分(0.1Ω×I+0.1Ω×I)で求められます。
VA = 210V – 0.1Ω×I – 0.1Ω×I = 210V – 0.1Ω×30A- 0.1Ω×30A = 204V
3 抵抗Bに掛かる電圧VBを求める
VBを求めるには、VA – 電圧降下分(0.1Ω×IB+0.1Ω×IB)で求められます。
VB = VA – 0.1Ω×IB – 0.1Ω×IB= 204V – 0.1Ω×10A- 0.1Ω×10A = 202V
4 全電力損失PLを求める
全電力損失PLは各0.1Ωにおける電力損失のことです。したがって、
PL=0.1Ω×I2 +0.1Ω×I2 +0.1Ω×IB2 +0.1Ω×IB2 =0.1×302 +0.1×302 +0.1×102 +0.1×102=200 W
したがって、答えはロです
2019年度 問7

増設負荷後の皮相電力【kVA】を求める
増設負荷後の皮相電力【kVA】を求める
変圧器の負荷は、問より≪有効電力P1= 90kW、無効電力Q1= 120kvar ≫
※問いには関係ないですが、皮相電力S1は、S1=$\sqrt{P^2+Q^2}$=$\sqrt{90^2+120^2}$=150kVA
増設負荷は≪有効電力P2=70kW 、力率100%の為、無効電力Q2=0 var≫
負荷増設後の皮相電力Sは、S=$\sqrt{P^2+Q^2}$によって求めます。有効電力Pと無効電力Qは、
- P=P1 + P2 = 90kW + 70kW = 160kW
- Q=Q1 + Q2 = 120kvar + 0 = 120kvar
上記より、皮相電力Sは、S=$\sqrt{P^2+Q^2}$ =$\sqrt{160^2+120^2}$ =$\sqrt{40,000}$=200 kVA

上記図は変圧器の負荷と負荷増設後の有効電力P、無効電力Q、皮相電力Sを表したもの
したがって、答えはハです
2019年度 問8

1 一次電圧6600V、二次電圧200Vの時、一次電圧を6300Vへ変更したときの二次電圧V2’を求める
計算式: 変更前の一次電圧V1×二次電圧V2 = 変更後の一次電圧V1’×二次電圧V2′
2 二次電圧の変化分を求める

問では図が無いのでイメージが付きにくいかと思うので、タップの切替は上記の図ようなものです。
1 一次電圧6600V、二次電圧200Vの時、一次電圧を6300Vへ変更したときの二次電圧V2’を求める
一次電圧に注目すると6600Vから6300Vと、6300V/6600V=0.9545(95.5%)、4.5%減となっています
二次電圧は、一次電圧の上げ・下げ率分を調整します。
つまり、一次電圧4.5%減の場合は二次電圧は4.5%分上昇。逆に一次電圧が上昇すれば、二次電圧は減少します。
計算式で表すと、変更前の一次電圧V1×二次電圧V2 = 変更後の一次電圧V1’×二次電圧V2′
変更後の二次電圧V2’は、V2’=V1×$\frac{V2}{V1′}$ =6600V×$\frac{200V}{6300V}$ = 209.5V
2 二次電圧の変化分を求める
二次電圧の変化は、V2′- V2 =209.5V – 200V = 9.5V 約10V上昇しています。
したがって、答えはイです。
2019年度 問9

1 1相あたりのリアクタンスX=(XLーXc)を求める
2 線電流Iを求める
3 無効電力Qを求める ≪公式:Q=3×I2×X ≫
1 1相あたりのリアクタンスX=(XLーXc)を求める
リアクタンスXは、X=(XLーXc)に求めることができますので、問の値を代入すると、
X=(XLーXc)=9Ω-150Ω =-141Ω (マイナスが付いていますが、容量性という意味)
※インピーダンスZは、抵抗負荷が無いため、Z = X = 141Ω
2 線電流Iを求める
Y回路の線電流Iは、I=$\frac{相電圧}{インピーダンスZ}$より求められます。(相電圧 =$\frac{線間電圧V}{\sqrt{3}}$ )
※Y回路は線間電圧V=√3×相電圧 、線電流I=相電流I の関係性
線電流I(相電流)は、I=$\frac{相電圧}{インピーダンスZ}$ =$\frac{V}{\sqrt{3}Z}$ =$\frac{V}{\sqrt{3}×141Ω}$
3 無効電力Qを求める
無効電力Qは、Q=3×I2×X=3×$(\frac{V}{\sqrt{3}×141Ω})^2$×141Ω =3×$\frac{V^2}{3×141Ω^2}$141Ω =$\frac{V^2}{141}$
したがって、答えはニです
以上、お疲れさまでした。
「出典:2019年度 筆記試験 第1種電気工事士 問1~9:一般財団法人電気技術者試験センター 試験の問題と解答 | ECEE 一般財団法人電気技術者試験センター (shiken.or.jp) 」